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教員研究紹介

教員研究紹介

【センター長 内村 浩美 教授】

新たな機能紙を開発して、人々の生活をもっと便利に!

➀セルロースナノファイバーを活用した機能紙の開発
➁一定時間内にインキ消去機能を有する機能紙の開発

➀セルロースナノファイバーを活用した機能紙の開発


セルロースナノファイバーの
電子顕微鏡写真

植物繊維をナノメートル(1/1,000,000ミリ)サイズにまで小さく解繊することにより得られるセルロースナノファイバー(CNF)は、軽くて強い、寸法安定性、透明性、ガスバリア性などの特性を有することから、高機能先端材料として非常に注目されているバイオ系材料です。

我々はCNF製造方法の開発やCNFを活用して、これまで世の中になかった紙を開発することにより、人々の生活をもっと便利にする機能紙の開発を行っています。

例えば、ボールペンで書いた文字(インキ)を一定時間内であれば消しゴムで消せる機能紙の開発や、酸素などの気体を遮断するガスバリア性を有する機能紙、健康診断などに活用できる医療診断・検査用の機能紙の開発などを行っています。

➁一定時間内にインキ消去機能を有する機能紙の開発

近年、あらゆる分野において電子化が進んでいます。情報メディアにおいても紙媒体で記録・伝達していたものを、電子機器を利用して記録、伝達処理することが加速しています。しかし、現在でも契約書や履歴書などの公式文書では紙が多く使われています。これらの重要文書では、筆記する際に、主にボールペンが用いられますが、修正したい時にボールペンで記述した文字は消しゴムで消すことができません。最近では、ペン上部のラバーとの摩擦熱によって、文字を消せるボールペンもありますが、常時消去できることから「公式文書には使用できない」と明記されています。

そこで、我々は一定時間内であれば消しゴムでインキ(文字)を消すことができますが、所定の時間が経過するとインキを消去できなくなるタイマー機能を有する便利な機能紙を開発しました。


インキ消去機能を有する機能紙の筆記消去試験結果


【副センター長 薮谷 智規 教授】

紙製品”を/で“分析することで次世代の紙産業を創る!

➀紙を分析する
➁紙で分析する(紙製バイオチップ)

➀紙を分析する

ものつくり、医療、環境変動など社会の様々な場面で”はかること=分析”が行われています。分析することで、過去や現在を把握し、これからの起こりうる未来を予測することが出来ます。また、製紙会社や紙加工会社の現場では、製品にさまざまな工夫を凝らして新たな機能を与えることが日常的に行われています。その機能がどこから生まれてくるのかを解明することが、製品のさらなる高機能化にとって重要です。このような機能の解明には、製品の詳細な分析が欠かせません。また、新製品を開発した後も分析は重要です。良質な製品を安定的に生み出すには、品質評価や工程管理を徹底的に行わなくてはなりません。たとえば、製品に異物が混入したり、規格に合わないものが作られた場合には、ただちに原因究明する必要があります。このときにも、製品をあらゆる角度から(物理、化学、生物的なさまざまな原理に基づき)分析することが行われます。現在、紙産業を支えるための分析技術の高度化に関わる研究に取り組んでおります。

➁紙で分析する(紙製バイオチップ)

紙を用いた分析デバイスの開発に取り組んでいます。現在もコロナ禍のただなかにありますが、検査の拡大を防ぐ第一の方策が検査の徹底です。検査は、だれでもできるような簡易で迅速なものが必要です。紙は軽量、安価、廃棄が容易などの特長を有しており、診断・ケアが必要とされる場所で簡単に検査する(point-of-care testing : POCT)ための材料として期待されています。医療現場で測定される物質は種類も濃度が様々であり、緊急性や即時性(すぐ結果が得られること)も要求されるため、バイオチップに求められる特性も多岐に渡ります。そのため、紙や繊維などの基材を工夫したり、新たな機能を付与するなどして、医療現場で使いやすく、定量性(濃度を正確に求めることが出来る)のあるチップの開発を目指して研究を行っています。


【伊藤 弘和 准教授】

地域と環境に貢献できる新しいプラスチック技術

➀グリーンコンポジットの材料研究
➁グリーンコンポジットのものづくりとしくみづくり

➀グリーンコンポジットの材料研究


グリーンコンポジットの研究

多くのプラスチック製品は、石油を原料として作られていますが、地球環境を守っていくためには、使い終わったプラスチック製品の再利用や使う量を減らしていくことが重要です。これからは、プラスチック製品の代わりに、木材や紙など植物を原料とした製品がたくさん使われる時代にしなければなりません。しかし、プラスチック製品は、私たちの生活の様々なところで利用されており、ゼロにはできません。そこで、プラスチックと植物繊維を組み合わせて、プラスチック使用量を削減できる材料(グリーンコンポジット)の研究開発を行っています。さらに、このグリーンコンポジットをいろいろな製品に使うため、高強度化などの機能性向上の研究も行っています。

➁グリーンコンポジットのものづくりとしくみづくり


ものづくりからしくみづくりまで文理融合した研究

グリーンコンポジット製品の利用を広めるためには、原材料の調達、製品の製造から販売まで一貫したビジネスを作らなければなりません。そこで、愛媛県で盛んな産業の一つである紙産業のポテンシャルを活用し、産業化するしくみづくりの研究開発を行っています。紙産業は、グリーンコンポジットの原料となる植物繊維であるパルプを製造し、様々な紙を作っています。さらに、紙からいろいろな製品を作り、販売する会社もあります。これら産業が力を合わせ、地域の強みを活かしたビジネスモデルを提案することが目標です。また、これからの製品は、使用した後、資源の再利用ができることが重要です。そこで、グリーンコンポジットでは、原材料だけでなく、リサイクルを考えた製品設計やリサイクル方法の研究も行っています。


【福垣内 暁 准教授】

環境に配慮した材料を作る

➀製紙技術を応用して環境に優しい新材料を作る
➁芭蕉和紙

➀製紙技術を応用して環境に優しい新材料を作る

印刷のにじみを抑えたり,発色を高めるために紙の表面には,粘土と呼ばれる材料が塗布されます。つまり粘土を紙表面に塗るだけで本来紙が持たない特性を付与することができます。我々はこの技術が金属のアルミニウムに応用できないか検討を行い,アルミニウムの表面の一部を粘土に転換し,金属-粘土ハイブリッド材料を作ることに成功しました。この材料は,環境負荷の少ない原料を用いて,常温という低温で容易に合成できる環境に大変優しい材料です。このハイブリッド材料にはアルミニウムでは達成できない,摩擦低減,気化熱冷却など多くの省エネ効果があることが分かっています。現在も実用化に向け研究を継続しています。


粘土の拡大

➁芭蕉和紙

バショウは、愛媛県の南予地方に植生するバナナ科の多年草です。大洲、内子地方では、古くより、バショウの葉をお盆の棚飾りとして利用する文化がありますが、葉以外は使用されず、廃棄されています。廃棄されるバショウの茎から繊維を抽出し紙を漉いてみたところ,太い繊維と細い繊維が織り交ざった風合いの良い紙が出来上がり,これを“芭蕉和紙”と命名しました。研究をすすめていくと,芭蕉和紙には、透明性、染色性、にじまないといった従来の和紙には見られない特徴を有することが判明しました。さらに,バショウの繊維には,セルロースナノファイバーという最先端の素材も含まれていることが新たに判明し,実用化に向けて研究を継続しています。


バショウ


芭蕉和紙


【深堀 秀史 准教授】

有害物質を除去できる紙で排水をきれいにする

➀光触媒-吸着材を配合した機能紙の開発
➁機能紙を用いた水中の微量化学物質の除去

➀光触媒-吸着材を配合した機能紙の開発

私は従来の紙にはない特殊な機能を持つ「機能紙」の開発と利用について研究しています。具体的には、水中の有害な化学物質を分解する光触媒や、吸着機能を持つ吸着材などを複合した紙を開発しています。紙というと、本やノート、ティッシュや段ボールを思い浮かべるかもしれませんが、現在では、紙に様々な機能を持つ繊維や材料を複合することが可能であり、紙の用途は環境浄化からエネルギー生産まで広がり続けています。上述の光触媒や吸着材はその一例です。水に入れても崩れない化学繊維で紙を作り、その中に光触媒や吸着材を配合することで、水の中でも安定して使え、かつ、水中の有害物質を取り除く紙を製造することができます。


光触媒と吸着材を配合した機能紙

➁機能紙を用いた水中の微量化学物質の除去

近年の水環境に関する課題として、人類が合成した化学物質による水環境汚染が挙げられます。元来、自然環境中に存在しなかった化学物質の一部は、環境中に流出した際に分解されずに蓄積する恐れがあります。私の研究では、上述の光触媒や吸着材を配合した機能紙で水中の微量化学物質を除去します。
光触媒と吸着材を配合した機能紙を排水中に入れると、水中の微量化学物質を紙中に取り込むことができます。また、この機能紙に紫外線を照射すると、紙中の光触媒の作用によって、取り込まれた微量化学物質が分解されることも明らかとなりました。現在はこの機能紙を搭載した水処理装置の開発に取り組んでいます。


機能紙を用いた水処理の様子


【秀野 晃大 講師】

酵素を使ったバイオマス新素材開発

➀酵素を用いたCNFの分離技術および用途開発
➁植物バイオマス成分分離技術の開発

➀酵素を用いたCNFの分離技術および用途開発


柑橘果皮CNFの概観と電子顕微鏡写真

セルロースナノファイバー(CNF)は、軽量高強度、ガスバリア性などを多くの機能を有するバイオマス由来の新素材です。現在、CNFは化学的な製造法や変性法が主流ですが、酵素を用いることで、省エネルギー且つ安全な調製および変性が可能になります。これまで、愛媛県の特産品である柑橘類の搾汁残渣(果皮)から、ペクチナーゼを用いた簡便なCNF調製法を確立すると共に、柑橘果皮CNFに乳化およびゲル化能を有する事を明らかにしてきました。他に、CNFを酵素処理によって変性する事で、熱安定性を向上させる事にも成功しています。現在、柑橘果皮CNFおよび酵素処理変性CNFの効果発現メカニズムや、用途開発について研究しています。

➁植物バイオマス成分分離技術の開発


製紙産業とバイオマス活用産業のプロセス

20世紀の化石資源に依存した社会は、大気中に排出された大量のCO2による気候変動等、多くの問題を生み出してきました。光合成によってCO2を固定する植物バイオマスの活用は、問題解決策の一つとなりえます。製紙産業は、木材を活用したバイオマス産業の成功例ですが、紙以外の用途も含めた新しいバイオマス活用産業を創出する必要に迫られています。我々は、バイオマスの新たな有効活用を目指し、酵素や微生物といった生物機能をうまく使って木材等の植物バイオマスを有用な物質に変換する研究を行っています。製紙産業の成功事例を大学と現場で学びながら、将来の新しいバイオマス活用産業を創る為に一緒に考え、研究しませんか?

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